悪戯好きの大統領
ホワイト・ハウスでのクーリッジ大統領 第30代大統領カルヴィン・クーリッジは歴史上の業績では名を残していないが、個人的には愉快な大統領であった。「クーリッジさん、あなたの趣味は?」と聞かれた時に「公職に就くことだ」と答えたそうだが、実際は悪戯が趣味だった。例えば、執務室に置いてあるベルでスタッフを呼んでおきながら、デスクの下に隠れスタッフがまごつくのを見るというまるで子どものような悪戯をしている。
 また別の機会には、執務室でクーリッジはすべてのボタンを一気に押してみた。それからすかさずドアの後ろに身を潜めた。すると閣僚たちが次々に何事が起きたのかと駆け込んできた。さらにはシークレット・サービスまで押っ取り刀で駆けつけてきた。すると、クーリッジは隠れ場所から飛び出して「皆がちゃんと働いているかどうか見たかっただけだよ」と言った。
 他にも、行政府ビルから居住区域への帰還をスタッフに知らせるボタンを押しておきながら、すぐに帰還せずに散歩に出かけてしまうという悪戯も好んでよくした。居住区域で大統領の帰りを迎えようと慌てて準備したスタッフにとっては大きな迷惑であったろう。クーリッジは狼少年のお話をきっと知らなかったに違いない。
 実はこのクーリッジ、「寡黙なカル」と言われるほどほとんど喋らなかった。クーリッジが亡くなった時も、あまりに寡黙なために本当に息を引き取ったか確かめてみないと分からないと揶揄されるくらいであった。ある時、1人の女性がクーリッジに「大統領閣下、私にお話し下さいな。今日、私はあなたから2語以上の言葉を引き出せるか賭けをしたんです」と話し掛けた。それを聞いたクーリッジは「あなたの負けです(You lose)」と答えたという。ただ寡黙なクーリッジさえも饒舌になる時があった。話題が妻のグレイスとの結婚に及んだ時である。結婚式は僅か15人の招待客しかいないというささやかな式であったが、クーリッジにとっては最良の思い出だったようだ。