勝ったのはいったいどっち?


 初代大統領ジョージ・ワシントンは、全ての選挙人票を獲得した唯一の大統領である。アメリカの大統領選挙は正確には直接選挙ではない。アメリカ大統領を直接選ぶのは選挙人と呼ばれる人々で、一般人は誰を選挙人にするのか選ぶシステムになっている。一般人が選挙人を選ぶのを一般投票という。選挙人は予めどの大統領候補を支持するのか公表している。だから実質的にはアメリカ大統領選挙は直接選挙だと言える。
 選挙人の数は州ごとに決まっていて、最多票数を集めることができた候補がその州の選挙人をすべて獲得する。このように一般投票と選挙人投票という二重のシステムをとっているために、大統領選挙では時々、一般投票の結果と選挙人投票の結果が食い違うということが起こる。
 1876年の大統領選挙では、ラザフォード・B・ヘイズ自身も対立候補のサミュエル・J・ティルデンに敗北したと思い込んでいた。実は一般投票では、ヘイズの得票数が約403万票だったのに対し、ティルデンの得票数は約428万票と大幅に上回っていた。しかし、選挙人投票ではヘイズが逆転していた。ティルデンが184票の選挙人を抑えたのに対し、ヘイズは辛うじて185票を獲得していた。僅か1票の差でヘイズは辛勝した。ヘイズは再三にわたって暗殺予告を受けたため、グラント大統領は、誰にも妨害されないように3月3日の深夜に大統領宣誓をヘイズに行わせた。
 1948年の大統領選挙では、ハリー・S・トルーマンとトマス・E・デューイが戦ったが、実はトルーマンが勝っていたのにシカゴ・トリビューン紙があやまって「デューイがトルーマンを破る」という記事を刷ってしまったこともあった。どの世論調査もトルーマンが負けると予測していたからである。
 つい最近の2000年の大統領選挙でも一般投票で約5046万票獲得したジョージ・W・ブッシュに対して、アル・ゴアは約5100万票獲得している。しかし、選挙人獲得数ではブッシュが逆転し、271人の選挙人を獲得、ゴアに5票差で勝利した。
 ヘイズとブッシュが一般投票で負けているのに選挙人票で勝てたのは、たまたま選挙人の数が多い州で多くの一般投票を得たからだ。2000年の大統領選では、ブッシュはフロリダ州で僅か327票の僅差でゴアに勝利し、25人もの選挙人を獲得することができた。もしフロリダ州で負けていたらブッシュは間違いなく負けていた。このフロリダ州の一般投票の集計に関しては一時期論争となった。またヘイズが勝利できたのは、何らかの密約がなされたからではないかと言われている。選挙は最後の最後まで分からない。

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