演説


第1次就任演説(1801.3.4)より抜粋 原文
 我々は、同じ原理を持つ同胞を異なる名前で呼んできました。我々は皆、共和派であり、我々は皆、連邦派です。もし我々の中に、我が連邦を解体しようと望み、あるいは共和政体を変えようと望む者がいても放置しておくことが比類なき安全策です。意見の誤りが容認される場においては、理性がそれに自由に対抗することができるからです。正直者は、共和政治が強固ではないことを恐れているかもしれません。確かに我が政府は十分に強大ではないでしょう。しかし、実直な愛国者は、世界の最善の希望である我が政府がそれ自体を保全する力を欲するかもしれないと理論的に、または目に見える形で恐れ、我々の自由と安定を今まで保ってきた政府を放棄しようというのでしょうか。私はそうは思いません。反対に、世界で最も強大な政府を私は信じます。我が政府は、法が求めるままに、すべての人々が法の旗の下に馳せ参じ、自分自身の問題として公的秩序の侵害に立ち向うという唯一の政府であると信じます。人は彼自身の政府を信頼することができないと言われることもあります。ならば他者の政府であれば信頼することができるのでしょうか。もしくは彼を支配する王達の庇護を求めることができるでしょうか。この問題については歴史が教えてくれるでしょう。
 勇気と自信を持って我々自身の連邦と共和制の原理、連帯と代議制政府への愛着を続けましょう。幸いにも自然と広大な海洋によって、[我々は]地球上の一地域で起きている破滅的な大惨事から隔てられています。しかし、[我々は]あまりに気高いために他者の零落に耐えることができません。数え切れないほどの我々の子孫達のために十分な余地を持つ選ばれた国を持っています。生まれによるのではなく、我々の行動とそれに対する我が親愛なる市民の判断によって栄誉と信頼を受けるべきであり、我々自身で勤勉さを身に付け、我々自身の能力を行使する権利が平等にあるという当然の感覚を[我々は]抱いています。確かに恵み深い宗教が様々な形で啓示され、信奉され、営まれていますが、そのすべては実直、真実、穏健、感謝、そして人類愛を説いています。[我々が]感謝の意を捧げ崇拝している神が、すべての摂理によって、我が国で人が幸福を享受し、今後もその幸福は弥増していることを証明しています。こうした恩恵がありながら、我々がもっと幸せで栄えた国民になるためにさらに何が必要でしょうか。親愛なる国民のみなさん、もうlつあります。賢明で質素な政府です。それは人々をお互いに傷付け合わないように抑止し、それ以外は自律的に勤勉と進歩の追求を自由に調整させ、労慟者のロから稼いだパンを奪い取らない政府です。これが良い政府の要点であり、我々の幸福の輪を閉じて完成させるために必要とされています。
 国民のみなさん、私は、あなた方にとって大切で価値があることすべてを把握するという職務を遂行しようとしていますが、私が政府の基本原則だと思うもの、そしてひいてはこの政権を形作ることになるものをあなた方に理解してもらうのは当然のことです。私は耐えうるかぎり最も狭い範囲で要約し、一般原則を述べますが、その制約についてすべては述べません。宗教的であれ政治的であれ、いかなる地位や信条のいかんに拘わらず、すべての人々を平等かつ適正に扱います。どの国との同盟に巻き込まれることなく、すべての国々と平和、通商、そして誠実な友好関係を築きます。州内の問題に関する最も有能な管理者として、そして反共和制的な傾向に対抗するための最も堅固な防壁として州政府のすべての権利を支持します。州内の平和と州外の安全の頼みの綱として連邦政府の組織全体の活力を維持します。国民の選挙権を用心深く保護します。平和的な救済手段がもたらされなければ、革命という名の剣で切り取られてしまうはずの権力濫用を、穏健かつ安全に矯正します。多数決への絶対的同意は共和政体の基本原則です。多数決によるのではなく、武力だけに訴えかける同意は専制政治の基本原則であり、まさに専制政治の生みの親です。よく訓練された民兵は、平時に、そして正規軍が救援に来るまでの戦争期に最も信頼できる存在です。軍人の権限に対する文官の優越性を認めます。公費を無駄なく使い、国民の負担を軽くとどめます。負債を実直に返済し、神聖なる国民の信頼を保ちます。農業とそれを助ける商業を振興させます。情報を伝播させ、公論という名の法廷ですべての権力濫用を糾弾するようにします。信教の自由、言論の自由、人身保護律の庇護の下での個人の自由、そして公平に選ばれた陪審員による裁判を保障します。

トマス・ジェファソン大統領歴代アメリカ合衆国大統領研究