ワシントンに示した憲法制定会議の議事案(1787年4月16日付)
「憲法制定会議で論じられると思われる課題について、かねてより考えを巡らしてきました。失礼ながら、私の心中にある新しい制度の概要をご覧に入れたいと思います。各邦が個々に独立していることは、一体的な主権とは相容れないと考えられますが、一方で全体を唯一の共和国に統合することは不適当であり実行不可能だと考えられます。それ故、私は中道を模索したいと思います。当面は国家権限の正当な優位性を支持し、地方権限はそれが従属的に有用である限りは除外しません。私は、土台として、代表方式の変更を提案するつもりです。現行の連邦制度によれば、重要な問題においては連合会議の施策を達成するためには各邦の仲介が必要ですが、各邦が同数の票を与えられているので重大な不均衡を是正できません。ヴァージニア邦やマサチューセッツ邦が、連合会議の内外において、デラウェア邦やロード・アイランド邦よりも影響力を持っていることは誰もが否定できないでしょう。[中略]。小邦は最終的には趨勢に従わなければならないでしょう。しかし、代表方式の変更を促すように考慮することにより、必要な権力移譲への大邦の反対を未然に防ぐことができるでしょう。現在の連邦権限に加えて、連邦政府は、統一性が必要とされるすべての問題に対して統制的かつ完全な権限を付与されるべきです。例えば、通商の規定、輸出入品に対する課税、帰化の条件や形式を定めることなどです。こうした統制的な権限だけではなく、これまで王の特権として行使されてきたように、いかなる各邦の立法に対しても行使できる拒否権が絶対に必要なように私には思われます。邦の管轄領域が侵害される可能性はとても低いでしょう。[拒否権という]こうした防衛的な権限がなければ、書面上で与えられるあらゆる統制的な権限は、巧みに回避され遂には反故となってしまうでしょう。各邦は連邦の管轄領域を侵害し続け、条約や国際法に違反し、利害に基づく誤った観点から編み出された敵意と悪意ある方策でお互いに苦しめ合っています。この[拒否権という]特権のもう1つの好ましい効果は、邦の政策による内変を抑制できること、そして、私利に動かされた多数者が少数者や個人の権利に対して攻撃を加えるのを制御できることです。[中略]。新しい制度に適切な効力と活力を与えるためには、単に各邦の議会による通常の権限に基づいて批准を得るのではなく、人民から批准を得なければなりません。各邦の現行政体においては、[連邦権限の]蚕食は避けられないので、人民から批准を得ることは不可欠です」

歴代アメリカ合衆国大統領研究/歴代アメリカ大統領研究者の成果