『フェデラリスト』38篇「憲法案に対する批判の一般的検討」(1788年1月12日)
「新体制に対して主張されている主な反対論のほとんどのものが、現存の連合規約体制については、一〇倍もの偽りを語っていることは朋らかではないだろうか。すなわち、金銭徴収の無制限の権限を連邦政府の手にまかせては危険だろうか。現在の連合会議は、必要と認めるだけの経費を要求することができるし、また、各邦は憲法上、その要求を満たさなければならないのである。また、連合会議は、国債を償還していく限り国債を発行することができるし、国の内外において一シリングでも貸し付けるものがありさえすれば、借り入れることもできるのである。軍隊を徴募する無制限の権限は危険だろうか。現在の連合は、連合会議にこの権限を与えており、しかもすでに用い始めているのである。政府のいろいろな権力を同一団体に混合することは、不適当であり不安全であるだろうか。一つの団体である連合会議は、あらゆる連邦権力の唯一の保持者である。金庫の鍵と軍隊の支配を同一の手に与えることはとくに危険であるだろうか。連合は、この二つを連合会議の手に与えている。自由にとって権利章典は不可欠のものであるだろうか。連合は、権利章典をもっていない。新憲法案が上院に、行政部と協同して、国法たるべき条約を締結する法的権利を与えていることが、新憲法案に対する反対の根拠となるのであろうか。現存の連合会議は、このような規制を何も受けずに、条約を締結することができるし、その条約を国の最高法であると宣言し、それを邦の大部分も認めているのである。奴隷の輸入が新憲法案によって二〇年間許されているのは不適当であろうか。旧憲法[連合規約]では、奴隷の輸入は永久に許されているのである。[中略]。巨額の独立した歳入基金が、単一団体[連合会議]の手に握られており、その団体は軍隊兵員を無制限に徴募できその維持のため無制限の期間にわたって金銭を充当することができるのである。それでもなお、この状況にだまっている傍観者がいるだけではなくて、こんな状況を呈している現制度の擁護者さえもいるのである。また同時に、新制度に反対する議論をわれわれは聞くのだが、なぜ彼らは、連合会議の現在の無能さによる危険な脅威から連邦を救う必要性とともに、現存の連合会議のようなひとつの構成団体の将来の権力と財源とに対して、連邦を守る必要があるとして、新制度の樹立を主張することに、もっと首尾一貫した行動をとらないのであろうか(齋藤眞・武則忠見訳)」

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