『フェデラリスト』48篇「立法部による権力纂奪の危険性」(1788年2月1日)
「政府の三部門のいずれかに当然に属すべき権限は、いずれにせよ、他の部門がこれを直接かつ全面的に行使してはならないことについては、すべての人の間で意見の一致をみているところである。また、政府のいずれの部門にせよ、その権限を行使する場合に、直接的にせよ間接的にせよ、他の部門に対して圧倒的な影響力をもつようなことがあってはならないことも、これまた等しく明白である。権力というものは、本来、他を侵害する性質をもつものであり、したがってそれに与えられた限界をこえないように、効果的にこれな抑制しなければならないものであるということは、何人も否定しえないであろう。それゆえ、まず理論的に権力を、本来、立法・行政・司法に属するものに従って、それぞれ三部門に分類した後、次になすべききわめて困難な仕事は、各部門に他部門よりの侵害に対する一定の具体的な保障を与えることである。この条件がいかなる形で与えられるべきかとい¬ことが、解決すべき大問題なのである。[中略]。立法部の憲法上の権力は、他の部門とくらべてより広汎であり、とくに厳格な制限も加えられていない。その結果、複雑な、また間接心な方策によって、立法部は他の部門に対する権力纂奪を比較的容易に行うことができるわけである。ある特定の方策を遂行することが、はたして立法部の管轄内のことなのかどうかは、立法部にとってまことに徴妙な間題となることが少なくない。これに反して、行政部の権限はより狭い管轄に限定されており、その性格においてより単純なので、また司法部もやはり同じくかなりはつきりした境界線で規定されているので、行政部や司法部が権力纂奪を行おうと計画しても、それはただちに暴露され、おのずから破綻を生ぜざるをえなくなるであろう。それだけにとどまらない。立法部のみが人民の財布のひもをとくことができ、また他の部門に従事する人たちの金銭的報酬に対し、いくつかの邦憲法では絶対的な裁量権をもち、あらゆる邦憲法では、大きな影響力をもっていることからして、行政・司法の二部門はどうしても立法部に依存しがちになり、その結果ますます立法部は他の二部門の権限を侵害しやすくなっているのである。[中略]。以上の観察からして、私としては正当な結論として、たしかに次のごとくいえると思う。すなわち、いっさいの政治権力を同一の掌中に圧制者のごとく集中してしまうことになる権力纂奪に対しては、単に政府各部門の憲法上の境界線を紙の上で宣言しただけでは、有効適切な保障とはなりえない、ということである(齋藤眞・武則忠見訳)」

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