『フェデラリスト』53篇「下院議員の任期」(1788年2月9日)
「正直な意図ならびに正確な判断に加えて、法津を制定しようとする間題に関するかなりの知識がなければ、だれしも有能な立法者になることはけっしてできない。この知識の一部は、その人物が公私の立場で関係している範囲内の情報入手手段によって得られるだろうし、他の部分は、その知識を駆使する必要のある他位にあって、実際に経験してみて初めて得られるか、あるいは、少なくとも初めて完全に得られるのである。したがって、このような場合についてはすべて、その任期は、職務の適切な執行に必要な実際的知識の範囲と何らかの比例関係があるべきである。多くの邦においては、議員数の多い部門の立法職務の任期は、われわれがすでに知っているように一年である。そこで問題は次のように簡単になる。州[邦]立法に必要な知識のためには一年の任期が必要であれば、連邦の立法に必要な知識は大量なので、二年の任期を必要とするのではないだろうか。[中略]。なお各州からの連邦議員は、すべての州の政務や法律についても何らかの知識をもち合わせていなければならない。すなわち、異なるそれぞれの州における商業、慣習ならびに取締規則に関する何らかの知識がなくては、外国貿易をどうして画一的法律により適切に統制することができようか。これらの諸点や他の点について相対的に異なっている状態に関して何らかの知識がなくては、各州間の通商をどうして適切に統制することができようか。各州の課税対象に関するいろいろな法律や地方的事情に通じていなくて、どうして適当に[連邦税を]課税し、有効に徴税することができようか。他州となる個々の州の多くの内部事情について同様な知識がなくては、民兵に関する画一的規則をどうして適切に制定できようか。以上の事柄は、連邦立法の主要対象であって、[連邦]下院議員が広汎な情報をもたなければならないことを、最も強く示唆するものなのである。[中略]。達邦下院議員のもつべき知識の一部で、これまでに言及しなかったのは、国際関係についての知識である。われわれ自身の通商を取り締まるには、合衆国と外国との条約に通暁していなければならないばかりではなく、諸外国の通商政策ならびにその法律に通じていなければならない。また、国際法についてもまったく無知であることは許されない。なぜなら、国内法の適切な立法対象となる限り、国際法は連邦議会に提出されるからである(齋藤眞・武則忠見訳)」

歴代アメリカ合衆国大統領研究/歴代アメリカ大統領研究者の成果