『フェデラリスト』56篇「各種利害把握に適当な下院議員数」(1788年2月16日)
「連邦下院に対する第二の攻撃は、下院議員数が少なすぎて、選挙民の利益について適当な知識をもちえないという点である。この反対は、提案されている議員数と合衆国の広大な地域、住民数および利害の多様性とを比較しているだけで、その比較と同時に、連邦議会が他の立法機関[州議会]とは異なる事情にあることも考慮すべきであるのに、それを考慮に入れていないところから生じていることが明瞭である。したがって、この攻撃に対して与えうる最良の回答は、連邦議会のいろいろな特殊性を簡単に説明することだろう。議員が、自分の選挙民の利害と状況について熟知していなければならないということは正しいし、しかも重要な原則である。しかし、この原則は、議員の権限と配慮すべき事項に関する関する限りの状況と利害についてであって、それ以上に拡大することはできない。立法範囲に入らないこまごました特定目的のもろもろの事柄については無知であっても、立法上の信託を正当に果たすうえに必要なことと両立しないわけではない。そこで、特定の権限を行使するうえに必要な情報の範囲は、その権限範囲内の諸目的にしたがって、決定されるべきである。[中略]。各州議員は、もうひとつの別の州の法律について相当の知識とその選挙区の地方事情についての知識をもっているだけではなく、おそらくほとんどの場合、州議会議員であったことがあろうし、いま現在州議会議員であることもあろうが、州議会には、州の地方的なあらゆる情報と利害が集まっているゆえ、それらが彼ら少数のものによって合衆国議会にたやすくもたらされるだろう。[中略]。たった一名の議員が二万八六七〇人の選挙民の権利を守り、これら選挙民の状態を行政部の影響力にさらされている議会で説明し、また、問題が最高度に多様化し入り組んでいる国家のあらゆる立法対象に、その権限を及ぼしているわけである。にもかかわらず、このような事情の下でも、自由の多くの部分が維持されているのみならず、イギリス法典の欠陥で、人民の事情に議会が無知であることに帰せられる部分はきわめて小さい。この例に、それにふさわしい重要性を与えるとすれば、また、これまで説明したわが国の下院の場合とイギリス庶民院とを比較するならば、三万人の住民につき一名の議員は、議員に託された諸利益の安全で有能な保護者となりうることを住民に保障しているものと考えられる(齋藤眞・武則忠見訳)」

歴代アメリカ合衆国大統領研究/歴代アメリカ大統領研究者の成果