『フェデラリスト』58篇「人口増に応ずる下院議員増」(1788年2月20日)
「私は、すこぶる重大な注意を要すると信ずる点につき、ひとつの観察を付け加えねばならない。すなわち、あらゆる立法議会で、構成人員が多いほど、その議事を事実上指導する人はより少なくなるということである。第一に、議会の議員数が多ければ、その構成者がいかなる性格のものであろうと、情念が理性を支配しやすいことはよく知られているところである。次に、人数が多いほど、知識が限られ能力のとぼしい者の割合が増えるということである。少数の者の雄弁と演説が強いカを発揮するのは、このことを物語るものである。古代の共和国においては人民全員が直接に会議に参加したが、ひとりの雄弁家あるいは術策に長けた政治家が、あたかも彼の手に王杖をもって支配するかのごとく、完全に会議を支配するのが普通であった。同じ原理で、代表者の会議であっても、構成人数が多けれぱ多いほど、集会につきものの不安定さをますます示すようになるだろう¬。無知は狡猾さにまんまとかつがれ、感情は詭弁と非難の餌食となる。ある限度以上に議員を増加し、これをもって少数者支配に対する障壁を強化するものだと考えることは、大きな誤りである。もしろ逆に、安全、地方の事情に関する知識、全社会に対する広汎な共感を確保する感性という目的を達成するのに十分な議員数を確保した後は、代表の増加によって、代表たちは彼ら自身の見解とは逆の行動をとるだろうということを、経験がつねに警告しているのである。政府は外面的にはいっそう民主的になるかもしれないが、政府を動かす精神は、より寡頭政治的になるだろう。政府機構は拡大されるだろうが、政府の活動を方向づける中心的部分は、ますます少数となり、しばしばいっそう秘密的となるだろう(齋藤眞・武則忠見訳)」

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