モンロー・ドクトリン(1823年12月2日)
「わが国の諸外国との個別の交渉や取引に関する対外関係の正確な知識は、とりわけ必要であると考えられます。同様に必要なことは、わが国の資源、歳入および国家の繁栄と防衛に関連するあらゆる種類の改善事業の発展について、われわれが正当な評価を下さねばならないことです。[中略]。使節団は、ガン条約の第五条の下で、画定を委ねられていた合衆国領とイギリス領の問の国境線の一部に関して意見が一致しなかったので、この第五条に従って、その画定は友好国の決定に付託されることもありうるという報告をそれぞれおこないました。[中略]。いくつかの重要な間題に関して長い間懸案になっているフランス政府との交渉、とりわけ前の戦争で介衆国市民が不当な差押さえや財産の没収により被った損失に対する正当な賠償交渉は、まだ望ましい結果をえていません。[中略]。vノ当地駐在のロシア皇帝の公使を通じてなされたロシア帝国政府の提案に際しては、アメリカ大陸北西海岸における米露両国それぞれの権利と利益を、友好的な交渉によって調整する完全な権限および訓令が、セント・ビータースバーグSt. Peteresburg駐在の合衆国公使に対して伝達されました。同様の提案がロシア皇帝によってイギリス政府に対してもなされ、それも同様に受諾されました。合衆国政府はこの友好的措置によって、これまで変わることなく皇帝陛下の友好的態度変を高く評価してきたこと、そして皇帝政府との理解をこのうえなく深めようと切望してきたことを表明したいと望んできました。このような関心からはじまった討議において、また両国が、その結果結ぶかもしれない協定において、合衆国の権利と利益が包含される基本的原則として、つぎの点を主張するのがこの際適切と判断されました。すなわち、南北アメリカ大陸は、これまでとり続け維持してきた自由と独立の状態によって、今後、ヨーロッパ列強のいかなる国によっても将来の植民の対象とみなされてはならない、という原則であります(富田虎男訳)。[中略]。ギリシャ人の英雄的闘争に鑑みて、彼らが戦いに勝利して、地球上の諸国民の間で対等な地位を回復するのに成功することに対して、強い希望が抱かれています。すべての文明世界は、彼らの幸福に深い関心をもつと信じられています。どの列強も彼らに味方するとは宣言していませんが、われわれの知るところによれば彼らに反対している列強はありません。彼らの大義と名前が、それがなければ、かのいかなる人民をも圧倒してしまったかもしれない危険から彼らを守っているのです。諸国家のやり取りに大幅に入り混じる、強大化を視野に入れた利益と獲得の計算は、彼らに関して言えばまったく影響がなかったようです。われわれが知りえた事実によれば彼らの敵は彼らに対する支配を永久に失ったと信じるに足る充分な理由があります。ギリシャが、再び独立国になると信じる十分な理由があるのです。かの国がその地位を得ることは、われわれのもっとも切実な希望の対象です(中嶋啓雄訳)。[中略]。連邦議会の前回の会期の初頭に、スぺインとポルトガルの両国では、国民の状態を改善するために多大の努力が当時払われていたこと、またそれがひじょうに穏健な手段でおこなわれているように思われたこと、が述べられました。その結果がそのころ予想されたものとはきわめて異なってしまったとは、あらためて述べるまでもないことです。われわれのつき合いも深く、祖先の地でもある地球上のかの地域[ヨーロッパ]での出来事について、われわれはいつも憂慮し、関心を抱いて注視してきました。合衆国の市民は、大西洋の向に住む仲間たちの自由と幸福のために、このうえなく友的な気持を抱いています。ヨーロッパ諸国自体に関連した題をめぐる諸国間の戦争には、わが国はいまだかつていかなる役割をも演じたことはありませんし、それはわが国の政策に合致しません。われわれが侵害行為に怒り、あるいはわが国の防衛に備えるのは、われわれの権利が侵されるか、いいちじるしく脅かされる場合に限ります。われわれはこの西半球における動きには必然的により直接的な関係をもっていますし、われわれがそれに関わる理由は、明敏で公平な観察者の眼には明らかであるにちがいありません。[神聖]同盟諸国の政治組織は、この点でアメリカのそれとは本質的に異なっています。この違いは、それぞれの政府のなかに存在しているものから生じています。わが国の政治組織は多くの血と財貨を犠牲にしてかち取られ、もっとも明敏な市民の英知のおかげで成熟をとげたものであり、また、その下でわれわれが比類のない幸福を享受してきた政治組織であって、その防衛には国民がこぞって当たります。それゆえにわれわれは、率直に、また合衆国とこれら諸国との間に存在する友好関係のために、つぎのように宣言する義務があります。すなわち、われわれは、ヨーロッパの政治組織をこの西半球に拡張しようとするヨーロッパ諸国側の企ては、それが西半球のいかなる部分であれ、われわれの平和と安全にとって危険なものとみなさねばならない、と。われわれは、いかなるヨーロッパ諾国の現在の植民地や従属地にも干渉したことはなかったし、今後も干渉するつもりはありません。しかし、すでに独立を宣言し維持している政府、しかもその独立をわれわれが十分な検討を加え正当な原則にもとづいて承認した政府の場合には、これを抑圧することを目的としたり、ほか方法でその運命を支配することを目的とするヨーロッパ諸国による介入は、どのようなものであっても、合衆国に非友好的な意向の表明としか見ることはできません。このような新独立政府とスぺインとの戦争に際して、われわれは独立政府を承認した時点で中立を宣言しましたし、中立を固守してきましたし、今後も固守し統けるつもりです。この方針は、本政府の所管官庁の判断で、合衆国の側での臨機応変の変更が、独立諸政府の安全保障にとって絶対に必要であるような場合を除いて、なんら変わらないでありましょう。[中略]。ヨーロッパに対するわれわれの政策は、ヨーロッパを長い間かき乱した諸戦争の初期の段階で採られたものでありますが、今日でも相変わらず同じ政策のままであります。それは、ヨーロッパ諸国のどの国の国内問題にも干渉しない、事実上存在する政府をわれわれにとっての合法的政府とみなし、その政府との友好関係を増進し、率直で堅固な断乎とした政策によってこの関係を維持し、正当な要求であればいかなる国の要求にもすべて応じ、またいかなる国の侵害行為にな屈伏しない、という政策であります。しかし、南北アメリ力大陸に関しては、事情はいちじるしくまた明白に異なっています。[神聖]同盟諸国がその政治組織を南北いずれかの大陸のどの部分にでも拡張しようとすれば、必ずやわれわれの平和と幸福は危険にさらされるのであります。また、わが中南米の仲間たちが、放っておけばひとりでに[神聖]同盟諾国の政治組織を採用するであろうなどと信ずる人は一人もいません。したがって、どのような形であっても、そのような干渉がおこなわれたとき、われわれが無関心に見すごすこすことも同様にありえないことです。[中略]。当事者自身に任せる、これが依然として合衆国の真の政策であり、ほかの諸国も同じ道をとってくれるようにと希望するものであります(富田虎男訳)」

歴代アメリカ合衆国大統領研究/歴代アメリカ大統領研究者の成果