「オバマは希望を与えてくれた。私は戦争について心配している。家族を食べさせていくのがやっとで今後、何が起こるか心配だわ。十六年間、工場で働いてきたけど、今は私たちにとって厳しくなっている。食べ物かガソリンどっちを買えばいいか悩んでいる。オバマは私たちの声を聞いてくれるわ」―オバマと握手したある工場労働者の声

 人気ドラマ『24 ?TWENTY FOUR-』に登場するアメリカ史上初の黒人大統領デイビッド・パーマーは理想の大統領です。決断力に優れ人間的な魅力にも溢れた人物です。パーマー大統領役のデニス・ヘイバートは、「自分の感情をコントロールできる知性ある男」を演じることができるように心がけたそうです。ヘイバートは自分が演技の時に思い描いた大統領像とオバマが似ているとインタビューで答えています。
 『24』が放映される前にコリン・パウエルの大統領選出馬が一時取り沙汰されていましたが実現しませんでした。断念の理由は夫人がパウエルの暗殺を恐れたためだと言われています。
 その後、2001年から2006年まで『24』がテレビで放映されました。多くの人々が黒人大統領出現の可能性を好意的にとらえるようになったと思います。放映終了後もデニス・ヘイバートは、ファンから「大統領に立候補してください」とよく言われたそうです。オバマが颯爽と登場したのはまさにグッド・タイミングでしょう。
 リーダーとなる者は人の心を動かす言葉を持っていなければなりません。特に政治家は、自らの理想を、自らの信念を人々に明確に伝えなければなりません。「文は人なり」という有名な言葉がありますが、まさに言葉は人なのです。たった一言の失言により政治生命を失うこともあれば、たった一度の演説で不朽の名声を得ることもできます。政治家の権力は法律を源にしているのではなく、多くの人々の心を動かす能力を源にしています。
 人の心を動かすためには何が必要なのでしょうか。難しい言葉や巧妙な言い回しが必要でしょうか。確かにそれらも大事ですが、記憶に残る一言と明確なコンセプトが最も必要なのです。
 アメリカの歴史では過去に演説の妙手だと言われる人がたくさん登場しています。マーティン・ルーサー・キング牧師やリンカーン、フランクリン・ルーズベルト、そしてケネディなどの大統領が代表的な例でしょう。
 リンカーンはかの有名なゲティスバーグ演説の中で、「ここで私たちが言うことには世界はほとんど注目もしないでしょうし、記憶に長くとどめることもないでしょう」と言っていますが、新しい自由について説いた演説は不朽の名演説としてその名を歴史にとどめています。
 本書では、バラク・オバマとヒラリー・クリントンの戦いの軌跡を追っています。2008年の民主党大統領予備選は稀にみる激戦でした。こうした緊迫した状況下では、たった一つの失言が明日の敗北につながります。またはたった一つの名文句が明日の勝利につながります。それは、あなたの身にもいずれ起こることかもしれません。本書により人を動かす言葉を学んで下さい。
 本書はオバマの言葉は、なぜ人の心を動かすのかを焦点においているのでオバマとクリントンの政策論争の詳細については述べていません。それは2008年の予備選挙は政策が主な争点ではなく、イメージとそれを形作る人々の心をとらえる言葉がより重要だったからです。本書は、オバマが人々の心をとらえた言葉と戦略を余すところなく紹介する本です。
ジョージ・ワシントン大統領歴代アメリカ合衆国大統領研究