演説


就任演説(1825.3.4)より抜粋 原文
 人間の諸権利の理論に関する実験の大いなる結果が、実験を行っていた前世代の終わりに、実験を始めた人々の最も楽観的な期待と等しいほど、成功を収めているのを見ることは私にとって喜びと励みの源です。連帯、公正、静謐、共同防衛、一般の福祉、そして自由の恩恵―それらすべては、その下で我々が生きている政府によって増進されています。現時点で今まさに去り行き現世第に道を譲ろうとしている前世代を振り返ってみると、我々はすぐに歓喜と明るい希望にひたることができるかもしれません。過去の経験から、我々は未来に対する教訓を引き出すことができます。二大政党が我が国の世論と感情を二分していますが、率直で公正な者は、我が政府の形成と統治に素晴らしい才能、非の打ち所がない尊厳、熱烈な愛国心、そして公平無私な犠牲を双方が捧げていることを認める一方で、双方が人間の欠陥や過ちの一部を自由に発散する必要があることもということも認めるでしょう。ヨーロッパの革命戦争は、正確には合衆国政府が初めて現行憲法の下で機能した瞬間から始まっています。それは、国家が戦争に巻き込まれ連帯の根幹が揺るがされるまで、すべての情熱に火をつけ党派抗争を激化させる心情と共感の衝突を生じさせます。試練の時は25年もの期間を費やしていますが、その期間は合衆国の対ヨーロッパ政策が、我が連邦政府の行動において最も困難なこととなり、政治的党派の基礎を成した時期でした。フランス革命戦争は破局を迎える一方で我々はイギリスと持続的な平和を保ち、有害な党派抗争の種は除かれました。その時から、政治理論や外国との関係に関連する原理の違いは存在せず、政党の継続的な連帯を維持するのに十分な原理の違いは生じず、もしくは健全な活気を世論や議会の議論に著しく与えるのに十分な原理の違いが生じていません。異議を唱える声もなく、我々の政治的信条は、人民の意思が基であり、人民の幸福が地球上のすべての合法な政府の目的であるということです。恩恵の最善の保障と権力濫用に対する最善の防護は、一般選挙における自由性、純粋性、頻度に存します。連邦政府と各州政府はすべて限定された権限を持つ主権であり、同じ主人に仕える召使であり、各々の領域で掣肘されず、相互の侵害によって掣肘され得ません。平和の最も確かな保障は、平和な時に戦争の砦を準備しておくことです。活気ある経済と明朗な公的支出は、税の負担の増大に対する防壁であり、可能であれば税の負担を軽減します。軍隊は文民の権威に厳格に従うべきです。出版の自由と宗教的意見の自由は侵害されるべきではありません。我が国の指針は平和であり、我々の連帯を救済する箱舟は我々が今、すべての点で一致している信念を条件とします。もし連邦議会制民主主義が、強国の一般的な問題に賢明に秩序正しく対応することができる能力を持った政府であるかどうかについて疑問を持つ者がいるのであれば、そうした疑問は解消されるでしょう。もし連邦の瓦解のうえに部分的な連合を樹立する計画があれば、それは風に散らされてしまうでしょう。もし外国に危険な愛着や敵対心があるのであれば、それは消えてしまうでしょう。国内外における10年間の平和は政治論争の敵意を和らげ、世論の最も不調和な要素に調和をもたらしています。これまで政党の規範に従ってきた国中の人々は、依然として寛大であるように努め、偏見と情念を放棄しようとしています。原理をめぐる論争の際に党員の記章を身に付ける者にのみ与えられる確信は、互いにあらゆる遺恨の名残を捨て、お互いを同胞かつ友人と見なし、才能と美徳のみに従うことによって得られるのです。

ジョン・クインシー・アダムズ大統領歴代アメリカ合衆国大統領研究