エピソード


女性記者の妙計
 アメリカ史上初の女性ジャーナリストであるアン・ロイアルAnne Royallは、アダムズに何度も何度もインタビューを申し込んだがその度に断られていた。そこでロイアルはアダムズより記事をとるために一計を案じた。
 朝5時にアダムズを尾行してポトマック川にやってきたロイアルは、川岸に脱ぎ捨てられたアダムズの衣類を手早く集め、その上に座り込んだ。そして、「こっちに来て下さい」と遊泳中のアダムズに叫んだ。
 驚いたアダムズは岸に戻って「君は何がしたいのだ」とロイアルに聞いた。ロイアルは「私はアン・ロイアルです。あなたから国営銀行問題についてインタビューをとりつけようと数ヶ月もの間、あなたに会おうとしてきました。ホワイト・ハウスに直撃しても入れてもらえませんでした。だから私はあなたの行動を監視して今朝、官邸からここまであなたを尾行しました。私はあなたの服の上に座っています。私のインタビューを受けるまであなたは服を取り戻すことはできません。インタビューを受けて下さるか、残りの人生をずっとそこで過ごしたいか、さあどうしますか」と答えた。
 アダムズはなす術もなく「川から出て服を着させて下さい。そうすればあなたのインタビューを受ける約束をします。私が身支度をする間、そこの藪に隠れていて下さい」と答えた。
 ロイアルはアダムズの答えに満足せずに「いいえ、それはできません。あなたは合衆国大統領であり、この銀行問題に関してあなたの意見を知りたいと思い、知るべきである数百万の人々がいます。私はその答えを得るつもりです。もしあなたが川から出て服を取り戻そうとしたら、私は悲鳴を上げます。そうすればすぐにも3人の漁師がその角に現れるでしょう。インタビューを受ける前に川から出ることはできません」と重ねて言った。
 結局、ロイアルは、アダムズからインタビューを取り付けることに成功し、史上初めて大統領にインタビューした女性となった。またアダムズは泳いでいる最中に服を盗まれてしまい、通りがかりの少年にホワイト・ハウスまで代わりの服を取りに行くように依頼したこともあったという。

政敵への追悼の言葉
 かつての政敵ジャクソンが亡くなったことを知ったアダムズは日記に「ジャクソンは英雄で、殺人者で、密通者で、そして、非常に敬虔な長老派で、彼の人生の最後の日々で世間の前で私を裏切り中傷した」と記している。

エマソン評
 1838年7月15日、ラルフ・エマソンはハーヴァードの神学校でいわゆる「神学校演説」を行なった。その演説は超越主義の片鱗が現れていたことで有名である。アダムズは公にはエマソンの演説に何もコメントをしなかったが、日記に「常軌を逸した演説と弁説」であり、エマソンが「教派の創設者たらんと野心を抱き、新たなお告げが緊急に必要だと考えた」と記している。アダムズにとってエマソンの思想は、「議論を巻き起こすことでキリスト教会の破滅」をもたらすものに他ならなかった。
 一方、エマソンは「元大統領ジョン・クインシー・アダムズは、その時代で最も優れた朗読者の1人だと言える。そのような力強い調子で聖書を読む者は他に聞いたことがない。彼の素晴らしい声が加齢によって大いに損なわれるまで、彼が公衆の面前で演説するのを聞いたことがなかった。しかし、ひび割れた言うことをきかない器官で、若い時のような力強さを示すという驚異を彼は成し遂げていた」と評している。

ジョン・クインシー・アダムズ大統領歴代アメリカ合衆国大統領研究