演説


就任演説(1837.3.4)より抜粋 原文
 我々の政治状況の中に潜んでいると思われる、近年の最も大きな不和と厄介事の顕著な原因は国内における奴隷制です。この問題が細心の注意を要することを我々の先祖は深く認識し、極めて賢明に辛抱強く扱ったので、あらゆる悪い予兆にも拘らず、現在まで奴隷制は我が国の静謐を乱しませんでした。そうした結果は、彼らがとった進路が愛国的であったことと公正さを十分に示しています。奴隷制に固執することで、それだけではなく予期されるあらゆる他の困難と危険の原因から生じる混乱から免れ得るのだと誤解されないことは明らかです。近年の出来事は、忍耐の精神からの少しの逸脱でさえ人類全体の利益に有害であるという些細な考えを明らかにしていないのでしょうか。興奮した情熱が荒れ狂う中で、穏健で友愛に満ちた感情は時に無視されます。そして、今、私は同胞の前に、この栄誉と信頼を受ける場に立っていますが、興奮した情熱が指示することに決して耳を貸さないように私の同胞に切望せざるを得ません。私が大統領に選出され、この問題に関する深い関心が刺激され始めるにあたって、それに関する私の見解を完全に知らしめること厳粛な義務であると私は思います。そして、誤った表明がなされる誘因がなくなった今、私の見解は率直に検討され理解されるでしょう。少なくともそうした見解は、私の前に開けた道において私の行いの基準となるでしょう。もし、私の選出に賛成した我が同胞の願いが満たされるのであれば、「奴隷州の願望に反してコロンビア特別行政区で奴隷制を廃止しようとする議会側のあらゆる試みに断固として強硬に反対する者として私は大統領職に就き、同じく州内に存在する奴隷制への些細な干渉にも抵抗すると固く決意している」と私は表明します。完全かつ率直に、こうした決定に至った理由を我が同胞に示しました。その結果、そうした理由は、最も直接的な影響を被る者も含めて合衆国民の大半に認められ信用されていると思うに足ります。こうした見解と衝突する法案は、1つも憲法で規定された私の同意を受けていないということを付け加えることがまだ残っています。こうした見解は、それが共和国の崇拝すべき父祖達を動かす精神と合致しているという信念、そして、続いて起こる経験によりそれが人道的であり、愛国的であり、目的に適っており、名誉あるものであり、公正なものだと明らかになるという信念の下、認められます。我が政体の安定に影響を及ぼそうとしてこの問題が扇動されたのであれば、それは著しく失敗に終わったと示すだけで十分でしょうし、この場合は他の場合のように、臆病な者の不安と我が政府を破壊しようとする悪意ある者の希望は衰える運命にあります。至る所で危険な興奮の情景が起き、地方の騒乱の恐ろしい事例が目撃され、行いの結果を無謀にも軽視することで、個人が公の怒りにさらされています。しかし、国民の大半も国の大部分も、連帯の絆と神聖な原理への献身を曲げていません。そのようになるでしょう。危険な扇動を試みようとすることは一時的な利益となるかもしれませんが、徐々に目的が知られるようになるでしょう。我々の領域内に広がっている我が政治制度に愛着を示すこと、我が国民が一体となって最終的に冷静で賢明な判断を行うことは、我が政体を転覆させようとする国内外のあらゆる試みに対して直接抵抗し掣肘することに常になるでしょう。

マーティン・ヴァン・ビューレン大統領歴代アメリカ合衆国大統領研究