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アメリカ歴代大統領研究ポータル

アメリカ大統領の任期

アメリカ大統領の基本事項


アメリカ大統領制の類型

 アメリカ大統領はアメリカ人にとって最も簡単に想起できる政治家であり、世界的にも最も強大な指導者と見なされている。政治制度としてアメリカ大統領制はその権限と職務の複雑さに対して熱心な研究が行われている。そうした研究はこれまでも、そしてこれからも政治学の分野で比類のないものである。
 アメリカは君主の代わりとして大統領職を創設し、それに基づく大統領制を構築した。その後、多くの国々が大統領制を採用しているが、その内実は多用である。諸国の大統領制は四つに大別される。すなわち、アメリカ型、ヨーロッパ型、フランス型、ラテン・アメリカ型である。

 アメリカ型大統領制

 アメリカは独立革命を経て君主を戴かない共和国になった。そこで国家元首が必要となって大統領制が創設された。アメリカ型大統領制では首相は置かれず、国家元首である大統領が行政権を持ち政権を運営する。

 ヨーロッパ型大統領制

 君主政の廃止に伴い、象徴的な国家元首が必要となり設置された。ドイツ、イタリア、スイスなどが該当し、大統領はほとんど政治的権限を持たず、首相が実質的に政権を運営する。

 フランス型大統領制

 従来、ヨーロッパ型の大統領制を採用していたフランスであったが、1958年以降、大統領の権限を強化した。ヨーロッパ型が発展したものと言える。アメリカ型との最大の違いは、フランス型では大統領と首相が並存する点である。フランスの他、東欧、旧ソ連諸国が多く採用している。

 ラテン・アメリカ型大統領制

 大統領の権力を制限する仕組みが未発達なために、大統領が独裁的になる傾向がある。

アメリカ大統領の役割と権限

 アメリカ大統領の役割は大きく六つに分かれる。アメリカ大統領は場合に応じて以下の六つの役割を演じ分けていると言える。

 国家元首Chief of State
 行政府の長Chief of Administrator
 議会指導者Legislative Leader
 外交決定者Chief of Diplomat
 最高司令官Commander in Chief
 経済の管理者Chief Economist

 国家元首としてのアメリカ大統領

  就任宣誓を行う
  外交官を接受する
  寄付を率先して行う
  栄典を授与する
  第一の平均的なアメリカ人
  祭日を規定する
  会葬者を務める
  巡行を実施する
  国家統一の象徴
  継承性の象徴
  政府の象徴
  国賓を迎接する
 

 行政府の長としてのアメリカ大統領

  大統領府の長
  閣僚の長
  独立執行機関の長
  行政独立委員会の長
  行政官指名権を行使する
  行政官罷免権を行使する
  機密費の使途を決定する
  連邦法を執行する
  非常時大権を行使する

 議会指導者としてのアメリカ大統領

  拒否権を行使する
  一般教書を提出する
  法案に署名して成立させる

 外交決定者としてのアメリカ大統領

  外交政策を公表する
  ドクトリンを形成する
  条約締結権を行使する
  外交協定締結権を行使する
  国家承認を行う
  外交官指名権を行使する
  特使を派遣する
  首脳交渉を行う
  諜報活動を管理する

 最高司令官としてのアメリカ大統領

  中立宣言と戦争終結宣言を行う
  戦争決議の下での軍事行動を監督する
  テロに対する軍事行動を実施する
  国連の下での軍事行動を実施する
  議会の宣戦布告の下での軍事行動を実施する
  軍事作戦を指揮する
  核兵器の使用を決定する
  国家防衛を管理する
  兵員を召集する
  戦時大権を行使する
  戒厳令を公布する
  人身保護令状を差し止める
  軍法会議を行う
  財産を接収する
  アメリカ国民の財産と生命を保護する

 経済の管理者としてのアメリカ大統領

  財務省を監督する
  大統領経済諮問委員会を主宰する
  予算管理局を監督する
  財政政策を主導する
  税制政策を主導する
  金融政策を主導する
  貿易政策を主導する

参考:大統領の職務に関するトルーマンの説明

 ハリー・トルーマン大統領は以下のように大統領の職務について説明している。

「合衆国大統領は6つの職務を持つ。[中略]。合衆国大統領の最初の大きな役割は、憲法をうまく機能させることだ。憲法[第2条]第2節に、大統領は法が忠実に施行されるように配慮する義務を担うとある。大統領は全国の代表であって、この国の1億6,000万人の人民の唯一のロビイストである。[中略]。憲法における大統領の次の職務は、連邦の軍務に服する合衆国の軍隊の最高司令官である。戦時において大統領は合衆国軍の絶対的な最高司令官である。大統領は、もし大統領が自ら指揮を執る場合、どのような目的であれ召集された軍隊の指揮官である。他の誰もそうすることはできない。軍事政策の方向性を決めるのも大統領の仕事である。[中略]。将軍を任命するのは大統領の特権である。そして、必要に応じて将軍を罷免する。[中略]。また大統領は合衆国の外交政策の決定者である。大統領は他国との関係に絶対的な責任を持つ。大統領は上院の助言と同意を得て他国で大統領の代理を務める大使を任命する。合衆国の外交政策を決定するのはいつでも大統領だ。他の誰もそうすることはできない。それから大統領は政府全体の法律制定者である。年に一度、一般教書で世界平和と国益に適切だと思うことを薦めることは大統領の職務である。[中略]。合衆国大統領は、国家にとって最善だと思うことを提案する。連邦議会は、大統領にどこに向かうべきか教える。それだけでは道半ばだ。大統領はそれをうまくいくようにしなければならない。議会が法律を可決した後、大統領の他にその法律を施行できる者は誰もいない。[中略]。大統領は政党の党首である。大統領は、政府を機能させるために与党の綱領を作る。彼は与党がどのように政府を機能させることができるか理解しなければならない。そして、大統領は、大統領自身が作った政策の責任を政党に負わさなければならない。[中略]。非常に興味深い職務がある。[中略]。国家元首として大統領は他国の国家元首の訪問を接受しなければならない。大統領は国王や女王、王族や首相を接受する。そして、訪問者の名誉のために晩餐会を主催する」

 さらにアメリカ大統領がいかに強大な権限を持つかについて次のように述べている。

「大統領は世界史上最も偉大な官職である。東洋の君主達、ローマの皇帝達、フランスの国王達、ナポレオン、ヴィクトリア女王、チンギス・ハーン、ティムール、モンゴル帝国の皇帝達、バグダッドのカリフ達の一人として今、合衆国大統領が持っている権力と影響力の半分さえ持っていなかった。大統領職は非常に重い責任である。しかし、責任は果たされなければならず、正しかろうが間違っていようが決断は下されなければならない」

ホワイト・ハウスによるアメリカ大統領の案内

 ホワイト・ハウスのホーム・ページでは以下のように紹介されている。簡潔だが必要な事項を抑えた定義である。

 アメリカ大統領はアメリカ合衆国政府と軍隊の最高司令官の両方である。
 憲法第2条の下、アメリカ大統領は議会によって制定された諸法の執行に責任を負う。アメリカ大統領の閣僚として指名された者が率いる15の行政部局が連邦政府の日常管理を行う。CIAや環境保護局のようなその他の行政機関がこれらに加えられ、その長は閣僚ではないが、大統領権限の監督下にある。アメリカ大統領は他にも、連邦準備制度理事会や証券取引委員会などの50以上の独立連邦委員会の長や連邦裁判所の判事、大使、そしてその他の公職を任命する。大統領府はアメリカ大統領の側近からなり、行政管理予算局、アメリカ通商代表部などの組織を伴う。
 アメリカ大統領は議会によって制定された法案に署名するか、または拒否権を行使する権限を持つ。しかし、議会は、両院の3分の2の議決によって拒否権を覆すことができる。行政府は、他国との外交を行い、アメリカ大統領は条約に関して交渉を行い署名する権限を持つが、それは上院の3分の2の承認を得なければならない。アメリカ大統領は、大統領命令を発令でき、それは行政府の役人に命令を下し、現行法を明確し、促進するものである。またアメリカ大統領は、弾劾の例を除き連邦犯罪に対して恩赦や特赦を与える無制限の権限を持つ。
 こうした権限はいくつかの責任を伴う。その中で憲法が求めていることは、「大統領は随時、連邦議会に対して連邦の状態についての情報を提供し、必要かつ時宜に適したと判断する措置についての審議を勧告すること」である。その要件を満たすのであればいかなる方法でもよいが、アメリカ大統領は伝統的に毎年一月(就任の年を除いて)に両院協議会で一般教書演説を行い、来る年の政策の見通しを述べる。
 憲法は大統領職に就くために3つだけ要件を挙げている。アメリカ大統領は35才でなければならず、生まれによる市民であり、少なくとも合衆国に14年間居住しなければならない。数多くのアメリカ人が少なくとも4年に1度はアメリカ大統領選挙で投票しているが、アメリカ大統領は実際には国民によって直接選ばれているわけではない。その代わりに、4年毎の11月の最初の火曜日に、国民は選挙人団を選んでいるのである。人口に応じて50州に割り当てられる。各州選出の議員1人に1人ずつ割り当てられる(コロンビア特別行政区は3名)。こうした選挙人がアメリカ大統領に票を投じる。現在、選挙人団の数は538人である。
 バラク・オバマ大統領は合衆国第44代アメリカ大統領である。しかし、彼はアメリカ大統領に就く者として43人目である。グローバー・クリーブランド大統領が第22代と第24代を務めたからである。今日では、アメリカ大統領の任期は、1期4年を2回までに制限されている。しかし、1951年に憲法修正第22条が成立するまで、アメリカ大統領は無制限の任期を務めることが可能であった。フランクリン・デラノ・ルーズベルトは大統領に4度選ばれ、1932年から1945年に亡くなるまで在任した。ルーズベルトは2期を越えて在任した唯一のアメリカ大統領である。
 伝統的に、アメリカ大統領とファースト・ファミリーはワシントンD.C.にあるホワイト・ハウスに居住する。ホワイト・ハウスはアメリカ大統領の執務の場であり、上級職員の事務所でもある。アメリカ大統領が飛行機で旅行する時に、飛行機はエア・フォース・ワンと指定されている。マリーン・ワン(大統領が乗っている時)と呼ばれる海兵隊のヘリコプターを使う。地上の旅の場合、アメリカ大統領は防弾を施した大統領専用リムジンを使う。

参考:アメリカ合衆国憲法