リンカーンの予知夢
ホワイト・ハウスに安置されたリンカーンの棺 リンカーンは鏡を見た時によく奇妙な幻影を見たという。鏡の中に蒼ざめて死んでいる自分の姿をよく見ていたというのだ。見間違いだと思い、リンカーンは何度も何度も確かめたがその度に同じ姿を鏡の中に見たという。
 暗殺される数日前に、リンカーンは不思議な夢を見たことをリンカーン夫人と親友で警護を担当していたワード・ラモンの前で語っている。リンカーンは不思議な夢を見たことをずっと悩んでいて、それを心配したリンカーン夫人が夢の内容を話すようにとリンカーンを促した。
 執務を終えたリンカーンは、前線からの至急報に備えてベッドに横たわっていた。当時は南北戦争終結間際だった。疲れていたリンカーンはいつの間にかまどろんでいた。
 夢の中でリンカーンは、数多くの人が嘆き悲しんでいる声を聞いた。リンカーンは自分がベッドから起き上がってホワイトハウスの部屋から部屋をさまよっているように感じたという。いくつかの部屋を周ってみたが、人の姿は全く見当たらなかった。しかし、目にするものはなじみのあるものばかりだった。
 多くの人がすすり泣いているのはいったい何故か。原因を探ろうとイースト・ルームに立ち寄ったリンカーンは驚いた。そこには棺があった。そして、兵士が棺を守るかのように佇立していた。
 リンカーンは、「ホワイトハウスで死んでいるのは誰だ?」と一人の兵士に聞いた。
 「大統領です。大統領は暗殺されたのです」と兵士は答えた。
 突然、大きな悲嘆の声が辺りを覆い、リンカーンは目が覚めた。リンカーンはその晩はまんじりともできなかったという。
 夢の内容を聞いたリンカーン夫人は、「なんて恐ろしいの。そんなの聞きたくなかったわ。夢なんか信じたくないわよ。そうじゃないとこれからずっと怖い思いをしなくちゃならないもの」と言った。 
 リンカーンは、「ああ、夢にすぎないからね、メアリ。もう言わないようにするし忘れよう」と夫人をなだめたが、いつか暗殺されるに違いないとリンカーンは確信していた。はたして数日後にリンカーンが暗殺された時、リンカーン夫人は、「あの人の夢は予言だったのよ」と叫んだという。
アメリカ大統領の逸話