天皇の御料車と御召列車
 御料車 昭和天皇が全国巡幸で乗用にされた御料車は「赤ベンツ」の愛称で知られている。赤ベンツの愛称は、車体に漆の溜塗が施されていることからきている。このグロッサー・メルセデス770Kは貴顕用に製造されたもので戦前にドイツより全部で七台輸入されている。  

 戦後すぐの日本は、現代の日本とは違って舗装されていない道も多く、巡幸途中に泥濘にはまり立ち往生するということもあった。また冷房装置が備わっていなかったので酷暑の際には非常に難儀を極めたという。虎ノ門事件の教訓から七台のうち二台は防弾装甲に改造され、さらに釘などを踏んでもパンクしないよう特殊なタイヤが設えられている。

 全国巡幸は大変な距離数だったので長距離移動は列車で行っている。その際に使用されたのが御召列車である。御召列車には主に一号編成と二号編成があり、御料車と前後二両ずつ計四両の供奉車からなる。この御召列車は通例、原宿にある皇室専用の宮廷駅から出発する。  

 全国巡幸当時使用されていた車両は、昭和七年に大井工場で製造された車両である。御厠は備えているが風呂も寝台も備えられていない。車両内部は大きく御座所と御休憩室に分けられている。御料車特有の設備としては三種の神器を祭った御剣璽奉安室がある。基礎構造は鋼板張りだが、内装は工芸の粋を集めたもので、天平草花紋様の絹張の壁面に、化粧板には漆による茶褐色木地塗り仕上げが施された樟が使用されている。

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