最も孤独なお仕事


 大統領というのは最も孤独な仕事の中の一つらしい。第28代大統領ウッドロウ・ウィルソンは妻エレンと29年間の結婚生活で1400通もの手紙をやりとりした。もちろん離れていた時に限るだろうから凄い数である。他にはハリー・S・トルーマンも「手紙魔」として知られている。妻ベスに送った手紙だけでも少なくとも1200通以上にのぼる。手紙の中では当時の政治情勢などについても語られている。
 なんでもウィルソンは随分と内気な性格であったらしい。ウィルソンは手紙の中で次のように語っている。

 「たくさんの人間が私に友情を申し入れてくれるのですが、内気ではにかみ屋のためか、あるいは私が気難しくて、友人に対する好みが偏狭なためか、ほとんどいつもその申し入れを断ってしまうのです。そしてそのくせ、私の気持を理解し私という人間を知ってくれる、共感と心からの親密な支持を与えるような、友人がまわりにいかに少ないかにがっかりするのです。たぶんそれは私が、与えるとなれば心のすべてを与えようとするからでしょう。私の心のすべてを欲する人はほとんどいないし、いたとしても私に自分の心をかえしてくれる人は少ないような気がします。こんなふうに感じるのは私が間違っているのでしょうか。こんな気持ちを抱きながらも私のように深く友情と親密な愛情をもとめうる人がいるでしょうか(田口 富久治・泉昌一訳)」

 この手紙を読むと、一見すると社交的であるのに、実はウィルソンがかなり内気だったという一面がよく分かる。また友人によるとリンカーンも随分と感じやすい人間だったようで「女のように優しく、そして穏やか」だったという。妻メアリと言い争いになった時も何も言い返さず逃げてばかりいた。休息するように別の友人から勧められた時も「休息することが身体のためにはいいだろうとは思います。しかし私の疲れた部分は内部に、手の届かない所にあるのです」と言っている。南北戦争という未曾有の国難を抱え、また「子供妻」メアリに悩まされる日々ではこういう発言が出ても何も不思議ではない。

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