奴隷から大統領になった男


 奴隷から大統領になった男がいる。それも二人もいる。過去に黒人大統領はいないはずだと読者は思うだろう。しかし、奴隷というのは黒人だけではない。徒弟奉公、日本で言うところの丁稚奉公だが、実はそれも奴隷の一種だと言える。なぜなら契約期間中、徒弟は主人に所有されるからである。つまり、実質的に奴隷とあまり変わらない。
 徒弟をしていたのは第13代大統領ミラード・フィルモアと第17代大統領アンドリュー・ジョンソンである。フィルモアは日本にペリーを派遣している。士農工商の身分制が当然だと思っていた当時の日本人からすれば、徒弟、つまり丁稚だった男が何故大統領になれたのか驚きだったに違いない。
 フィルモアは洋服店に徒弟奉公し、数年間働いた後、自分自身を30ドルで買い戻した。一方、ジョンソンは仕立屋に徒弟奉公したが、途中で逃げ出した。主人は地元の新聞にジョンソンを連れ戻した者に10ドル与えるという広告を出した。しかし、それに応ずる者は誰もいなかった。
 フィルモアもジョンソンも極貧の家庭に生まれ、ろくに学校にも通わせてもらえず徒弟奉公に出されたので、ほとんど読み書きができなかったという。そのため妻から読み書きを教わったそうだ。
 ジョンソンの妻エリザは靴屋の娘で結婚当時16歳だった。エリザは、ファーストレディの中で、最年少で結婚したことになる。ジョンソンが仕事をする傍らで大きな声で読み物を読んだり、数字の数え方を教えたりした。
 フィルモアはジョンソンより少しはましで聖書くらいは読むことはできた。フィルモアは一念発起して勉強し学校に入り直した。そこで出会ったのが妻のアビゲイルである。実はアビゲイルは教師だった。ただ学生と教師といってもアビゲイルがフィルモアよりも一つ年上にすぎない。アビゲイルの教育が良かったのかフィルモアは最終的に弁護士になり、政治家になる第一歩を踏み出している。内助の功とはまさしくこのことだ。

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