雲仙での御休養日
 昭和24年5月26日、九州にお入りになって以来、初めての御休養日である。この日は絶好の行楽日和であった。天皇陛下は御宿泊所の九州ホテルを9時半にお出ましになり、先ずお車で仁田峠(標高1080m)に向かわれた。仁田峠では「あの辺りが阿蘇でございます」という宮内府長官の言葉に対して、「あーそう」と天皇陛下はご冗談をおっしゃった。また入江侍従に向かって「ここは標高1080メートルか。軽井沢は3000尺だからメートルになおしたとしても少し高いが日光の湯本と同じ位カナ」とおっしゃった。  

 それから天皇陛下は仁田峠から野岳(1142m)に登られた。途中、雲仙ツツジに目を留められた天皇陛下は、「これが雲仙ツツジなのかね。少し紅すぎはしない。深山キリシマというんだろうね」とお尋ねになった。

  野岳頂上では、熊本県で巡る予定の天草地方下島をご覧になって「これで下島にたいする予備知識が出来た」とおっしゃった。  

 ご昼食後、午後からは絹笠山麓の原生沼と白雲池におなりになった。原生沼では、天然記念物の沼野植物群落ご観察のために沼にお入りになろうとした天皇陛下を入江侍従がとめる一幕もあった。入江侍従が「陛下も腕章をおつけ遊ばしたらお入りになれるかもしれません」と言うのをお聞きになり天皇陛下はお笑いになられた。

 雲仙で秋グミ、オキナ草、ひめはぎ、富士すみれなどをご存分に愛でられた天皇陛下は、「よい静養だった。こんなうれしいことはなかった」とご感想を述べられた。

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