どこです、どこです、陛下はどこです
「先生のいうことをよく聞いて勉強し立派な人になって下さい」  

 昭和24年6月6日、昭和天皇は、宮崎県立盲学校にお立ち寄りになり、在校生たちを励まされた。さらに卒業生たちには「世の中に出てよくやっているそうですが、ますます努力して幸福な生活を営むよう希望します」と温かいお言葉を賜った。また教職員には「どうぞ目の見えぬ気の毒な人たちですから温かい教育で立派な人をつくるよう努力することを希望します」との優諚があった。  

 天皇陛下のおなりをどのようにして迎えるか学校側は思案した結果、天皇陛下のみ靴をお召しになり、その他の者は靴を脱いでもらうことに決めた。それにより、生徒たちが天皇陛下のおなりを知ることができるからである。  

 生徒たちの作った品々をご覧になった天皇陛下は「よく出来ていますネ」とお褒めになった。次に天皇陛下は小学部二年生の教室に入られた。先生の「みなさん、天皇陛下がただ今おいでになりましたよ」との言葉に、六人の生徒たちは「いらっしゃいませ」と挨拶した。天皇陛下は微笑みながら返礼された。「マツ子さん、天皇陛下が分かりますか」と先生が一番手前に座っている少女に聞くと、「どこです、どこです、陛下はどこです」とその少女は小さな両手を伸ばした。先生がたまりかねて「ホラ、マツ子さん、あなたの右の方ですよ」と言うと、天皇陛下もお体を少女のほうに寄せられた。

 手がお召し物の袖に触れると少女は嬉しげな表情をし、それをご覧になった天皇陛下は、 無言でじっとされていた。先生が、「わかったでしょう」と少女に声をかけ肩を抱くようにしてようやく着席させた。私は全国巡幸中の逸話の中でこの逸話が最も好きだ。

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