アメリカ大統領の収入や給料は?

アメリカ大統領の年俸

 大統領が給料を受け取ることについては憲法で規定されているが、額は明示されていない。憲法制定会議では、当然、大統領の給料について話題に上がった。ベンジャミン・フランクリンも大統領は無給にすべきだという考えを示したが、現実的ではないとして採用されなかった。
 初代アメリカ大統領ジョージ・ワシントンは経費のみの支払いを受けて、給料は受け取らないという方式を提案したが、議会は給料を与える方式を採択した。以下は給料額面の変遷である。こうした給料額面は、諸外国の同様の官職に比べるとそれ程、高額ではない。
 また1949年に季節毎であった支払いが月毎に変更された。つまり、アメリカ大統領は月給制である。1969年には本給と経費の他、1万2,000ドルの娯楽費と10万ドルの旅費がそれぞれ非課税で与えられるようになった。もちろんホワイト・ハウスやエア・フォースの運営費は別予算である。

アメリカ大統領の年間報酬と経費支給額

決定日 年間給料総額 備考
1789年09月24日 2万5,000ドル  大統領官邸に関わる経費、個人秘書の人件費などはすべて大統領が負担する。
1873年03月03日 5万ドル   
1909年03月04日 7万5,000ドル 
1949年01月19日 10万ドル+経費5万ドル  経費は非課税だったが1953年1月20日より課税対象に
1969年01月20日 20万ドル+経費5万ドル  1979年以来、経費は非課税になったが、未使用分は国庫に返納。 
2001年01月20日 40万ドル+経費5万ドル 
 年俸40万ドルというのは、一般人からすれば多く見えるが、大リーガーの平均年俸の半分にも満たない。現在、アメリカ大統領は世界で最も権力を持つ官職だからそれではいかにも少ない。
 ただ大統領には様々な特典が用意されている。まず評価額3億ドル以上のホワイトハウスに住むことができる。ホワイトハウスには132部屋あり、温水プール、ジム、ボーリング場、映写室、図書室、医療室、歯科治療室、理髪室と何でもそろっている。約100名近くの専属スタッフがいて、かれらの給料だけで年間300万ドル以上にのぼる。それにチェスター・アーサーが言ったように「こんな家には住みたくない」と思えば改造も思いのままである。もっとも現代のホワイトハウスには年間150万人以上の観光客が訪れるので、本当にプライベートな区域はごく一部に限られている。
 さらに専用リムジン、専用ヘリコプター「マリーン・ワン」、専用ジェット機「エア・フォース・ワン」も準備されている。エア・フォース・ワンでは、映画、テレビ、音楽といろいろ楽しめるが、「エア・フォース・ワンに搭乗」と印字されたカードで遊ぶこともできる。総経費は年間で2億ドル近くかかる。ジョージ・H・W・ブッシュがブロッコリはメニューから外せと指示したように料理の細かい指定さえできる。
 これだけ至れり尽くせりであれば、大統領はさぞかし懸命に働いているに違いない。実はそうとも限らない。第23代大統領ベンジャミン・ハリソンは、朝9時に執務を始め、お昼頃には執務を終わらせていた。実質労働時間は2、3時間である。第30代大統領カルヴィン・クーリッジは1日の平均睡眠時間がなんと11時間だったそうだから、あまり働いていなかったはずだ。ジョン・ケネディも朝7時から働いてはいたとはいえ、午後は昼食を取った後、水泳をし、お昼寝をして午後遅くになってようやく執務に戻ったというからそこまで長時間は働いていなかったかもしれない。
 しかし、反対に働き過ぎた大統領もいる。第11代大統領ジェームズ・ポークだ。ポークは若い頃から浮いた噂もなければ趣味もない政治一筋の人間だった。大統領になったポークは夏休みもとらず毎日毎日12時間から14時間も働き続けた。ポークは任期終了後4か月も経たないうちに病死した。一説によると過労が原因だという。それだけ一生懸命に働き、数多くの業績をあげたのにポークの知名度はぱっとしない。少し気の毒のような気がする。

世界の元首との比較

 アメリカ大統領の報酬は他の元首の年俸と比較して多いのか。例えば20世紀初頭の各国の元首の収入は以下のようになる。
年間報酬総額
ロシア皇帝 817万9,000ドル
ドイツ皇帝+プロイセン国王 65万ドル+315万ドル
イタリア国王 320万ドル
イギリス国王 310万5,000ドル
スペイン国王 185万ドル
ベルギー国王 87万5,000ドル
オランダ国王 52万5,000ドル
デンマーク国王 34万5,000ドル
フランス大統領 24万ドル
アメリカ大統領 7万5,000ドル
※20世紀初頭にアメリカで発行された新聞を元に作成。

 さて現代はどうなっているだろうか。国家元首と行政府の長の両方が含まれている。
年間報酬総額
イギリス国王(国) 4,280万ドル
日本天皇(国) 内廷費約300万ドル(3億2,400万円)
宮廷費約約5,000万ドル(55億円)
シンガポール大統領(国) 300万ドル
シンガポール首相(政) 170万ドル
オーストラリア首相(政) 50万7,000ドル
オーストラリア総督(国・代) 42万5,000ドル 
コモロ大統領(国) 40万8,000ドル
アメリカ大統領(国) 40万ドル
オーストリア大統領(国) 36万7,000ドル
日本首相(政) 36万7,000ドル
アイルランド大統領(国) 34万ドル
中国国家主席(国) 2万2,000ドル
※経費や純収入の考え方が各国で異なるので本来は正しい比較が難しい。したがって、この票はあくまで概観である。

退職後の特典

 1958年の元大統領法に基づいて、アメリカ大統領は退職後に年2万5,000ドルの年金と事務所とスタッフの費用として年5万ドルを受け取れるようになった。それまでは初代大統領ワシントン以来、そうした特典はなく、クーリッジ大統領などは退職後に月36ドルの賃貸住宅に移らなくてはならなかった。トルーマン大統領も退職後、ミズーリの自宅に帰るまでの鉄道料金を自分で支払っている。
 さらに1989年1月以来、すべての大統領は閣僚の給料相当額の年金を受け取っている。例えばクリントン大統領は年18万4,900ドルである。さらに退職後30ヶ月は15万ドルを事務所とスタッフの費用として受け取り、その後は年9万6,000ドルを受け取ることができる。大統領の未亡人も年2万ドルを受け取る。
 その他にも、政治的なものでなければ郵便は無料使用できる。これは元大統領が多くの手紙に気兼ねなく返信できるようにするためである。1988年以降、大統領から元大統領への公的立場の移行を速やかにするために基金(2001年で183万ドル)から割り当て額を受け取ることができる。
 安全保障については1962年にシークレット・サービスによる護衛が決定され、1965年には期間が終身になり、配偶者、16歳以下の子供にまで護衛対象が拡大された。配偶者も再婚した場合を除いて終身護衛を受けることができる。
 その後の法改定により、1997年1月1日以降に就任した元大統領と配偶者は10年間の護衛を受けることができるが、その後、財務省の許可があれば護衛は延長される。ただし、元大統領本人については年100万ドルまで、配偶者については年50万ドルまでに予算が限られる。
 一般調達局(General Services Administration)は元大統領の事務所費用を負担しているが、その場所や規模については明確な規定がない。2006年度の予算はそれぞれ、カーター元大統領10万2000ドル、ブッシュ元大統領17万5,000ドル、クリントン元大統領47万3,000ドルとなっている。一般調達局の報告では1977年から2000年で元大統領とその家族に対して総計3億7,000万ドルを費やしたという。こうした莫大な予算はしばしば問題となっている。