最期の言葉

 「ブルータスよ、おまえもか」という最も有名な言葉を最期に残したのはジュリアス・シーザーだが、大統領の臨終の際の言葉もしっかりと歴史にとどめられている。ただしローマ史上最も有名なシーザーに適うような名言を残した大統領は誰もいない。
ワシントンの死 まずジョージ・ワシントンの言葉から見てみよう。「私をきちんと埋葬せよ。死後二日経たないうちに遺体を墓所に納めないように。私の言うことが分かったか。それでよい」。ワシントンがこう言い残したのは生き埋めにされることを恐れたからである。
 「ひどい頭痛だ」。死の直前、愛人の傍にいたフランクリン・D・ローズヴェルトはそう言って意識を失い返らぬ人となった。最も短いのは第18代大統領ウリセス・S・グラントの「水」という一言である。咽頭癌に苦しめられたグラントは死の直前に、「私ほど喜んで死に行く奴はいやしない」と書き残している。
 おそらく最も哲学的な言葉を残したのは第28代大統領ウッドロウ・ウィルソンである。「私は壊れた機械の一部に過ぎない。機械が壊れたなら・・・覚悟はできている」。
 第22代大統領グロヴァー・クリーヴランドの言葉は「正しいことをするために私は一生懸命頑張った」。大統領の仕事は役人が不正をしないようにしっかり見張ることとよく言っていたクリーヴランドらしい言葉である。ジョン・F・ケネディの暗殺直前の言葉は、「確かにそうだね」という一言。「ダラスがあなたを愛していないなんて言えないですね」という言葉に対する返答だった。
 愛情溢れる言葉もある。第7代大統領アンドリュー・ジャクソンは、「泣かないでおくれ。良い子でいるんだよ。そうすればみんなまた天国で会えるだろうよ」と養子たちに言い残した。第19代大統領ラザフォード・B・ヘイズは「私はルーシー[妻]のいる所に行こうとしているんだよ」と言って天に召された。「私には何も後悔することはないが、友達のもとを去ろうとしているのは残念だ」という言葉は第12代大統領ザカリー・テイラー。
 平凡な言葉の例としては、就寝中に亡くなったセオドア・ローズヴェルトの「明かりを消してくれ」という言葉やドワイト・D・アイゼンハワーの「行かせてくれ。神が私を召されている」という言葉が代表的な例である。